今日もアレ的なsomethingについてアレしていく。
まおにゃすだお。
俺は、家でじっとしているのがあまり得意ではない。
学生時代はダンスをやっていたし、社会人になってからはギターも始めた。今は乗っていないが、バイクも好きだ。
お酒が好きなのは、ご存じの方も多いと思う。
知らなかった方は、もっとほかのことから覚えてほちぃ。
そんな俺が、新しくハマったのがキャンプである。
コロナ禍で、ゴルフやキャンプをよく見かけるようになったころ。俺もキャンプを趣味にしたいなと、ずっと思っていた。
ただ、興味があることと、実際に始めることの間には、まあまあ距離がある。
何を買えばいいのか。どこへ行けばいいのか。そもそも、行った先で何をすればいいのか。
外に出るのは好きなのに、外での過ごし方がわからない。
結局、友人に連れていってもらった。
そして、見事にハマった。

今ではギアも好きになり、一人でソロキャンプに行くまでになった。
家でじっとしているのが苦手な男が、わざわざ外に小さな家を建てに行くようになったのである。


*
道具を買うにあたって、一つ、過去の経験が役に立った。
昔、スーツケースを買うとき、大きいものにするか、小さいものにするかで悩んだことがある。
そのときの俺は、こう考えた。
いつか彼女ができたら、二人分の荷物を入れるかもしれない。
だったら、大きいほうがいい。
大は小を兼ねるとも言うし。
たいへん合理的な判断に見えるが、判断の前提に、まだいない彼女が参加している。
結局、大きいスーツケースを買った。
しばらく彼女はできなかった。
荷物を入れる余裕はあったが、入れるはずだった荷物の持ち主が現れなかった。
そして俺は、小さいスーツケースも買った。
大は小を兼ねると言ったのは、誰だ。
兼ねていたら、二個目は買っていない。
そんな過去がありながら、キャンプのテントを選ぶとき、俺はまた少し考えた。
いつか大家族になるかもしれないし、大きいのを買ったほうがいいのではないか。
彼女もいなかったころのスーツケースから、ずいぶん話が進んでいる。
まだ泊まる人が決まっていないのに、間取りだけが広くなる。
ただ、今回は踏みとどまった。
ソロキャンプ用のテントを買った。
ちゃんと、今いる人数を数えたのだ。
一人だった。

*
さて、キャンプの話をすると、よく聞かれることがある。
「虫、嫌じゃないの?」
嫌である。
とても嫌である。
俺は、虫が苦手だ。
見るだけでゾッとする。できれば、お互いの存在を知らずに暮らしていきたい。
ただ、昔からそうだったわけではない。
祖父は愛媛で田んぼをやったり、山でみかんを作ったりしていた。俺も、子どものころは自然に触れる機会が多かった。
祖父の家には、ネズミやゴキブリもよく出た。
あるとき、俺は聞いた。
なんで、おじいちゃんの家には、こんなにネズミやゴキブリがいるのか。
すると祖父は、飼っているんだ、というようなことを言った。
もちろん、冗談である。
ただ、当時の俺には、まだ「もちろん」がなかった。
おじいちゃんは、ネズミもゴキブリも飼っているのか。
すごい。
犬や猫だけではない。そういう生き物とも仲良くなれるのか。
俺は、祖父を尊敬した。
そして、その感動を学校の作文だか日記だかに書いた。
おじいちゃんはすごい。ゴキブリもネズミも友達で、たくさん飼っている。
というようなことを、素直に。
母親に見つかり、ブチ切れられた。
祖父の冗談を、孫が学校に提出してしまったのである。
家庭内で楽しむ話に、勝手に外部への発信力を持たせてしまった。
今ならブログに書く前に少し考えるが、当時の俺には編集者がいなかった。
母親が、公開後に来た。
ちなみに、小学校の作文にはほかにも話があるのだが、それはまた別の機会に。
母親には申し訳ないが、まだ在庫がある。
*
そんな環境に触れていた俺も、大人になるころには、すっかり虫が苦手になっていた。
育つ場所も変わり、虫に触れる機会が減っていったからかもしれない。
理由は、よくわからない。
とにかく、今は嫌なのだ。
だから、「そんなに虫が嫌いなのに、キャンプは大丈夫なの?」と聞かれるのも、当然だと思う。
ところが、キャンプの虫は、そこまで気にならない。
虫そのものが急にかわいく見えるわけではない。
祖父のように飼いたくなったわけでもない。
でも、家で見たときとは、明らかに気持ちが違う。
なんでだろう。
考えてみると、家で虫を見つけたときの俺は、こう思っている。
俺んちに、なんで虫がいんだよボケ。
言葉遣いはよくないが、気持ちとしては正確である。
ここは俺の家だ。
俺が暮らすための場所に、なぜ君がいる。
呼んでいない。約束もしていない。
ずいぶん勝手なやつだなと思っている。
ところが、キャンプの場合はどうだろう。
もともと虫が暮らしているところへ、俺が出かけていく。
道具を持ち込み、テントを張って、そこに泊まろうとしている。
虫からしたら、さっきまで何もなかったところに、急におじさんの家が建つのだ。
しかも、そのおじさんが、自分を見て嫌そうな顔をしている。
なんだこいつは。
それは、虫のセリフである。

*
家で虫を見れば、俺は「勝手に入ってくるな」と思う。
でも、キャンプでは、俺が向こうの暮らしにお邪魔している。
同じ虫なのに、どちらの家なのかで、ずいぶん話が変わる。
虫が出た。
そう思っていたけれど、向こうからすれば、俺が来たのだ。
別に、虫を好きになったわけではない。
ただ、「ここにいるのは当然か」と思えるようになった。
新しい趣味を始めると、道具が増えたり、行く場所が増えたりする。
俺の場合は、それに加えて、虫に対する態度が少し変わった。
家では、なんでいるんだよ。
キャンプでは、お邪魔しております。
ずいぶん態度の変わる男である。
でも、立場が変わったのだから、挨拶くらいは変えたほうがいい。

ソロキャンプ用のテントを買って、ようやく人数に見合った買い物ができるようになった俺は、そこで、もう一つ学んだ。
キャンプにいる、お邪魔虫。
あれは、俺のほうだった。
的なフィーリングはいかがかな?